研究内容

コンセプト

1990年、フラスコの中で正方形のシンプルな分子が組み上がった。この分子の発見が、我々の研究の始まりである。


 この正方形分子は今では見慣れた普通の環状錯体にみえますが、当時環状分子の合成はとても困難でした。なぜなら、明確な方向を持たない結合は繁雑な生成物を与えやすく、有限かつ単一な高次構造を制御することが困難だったからです。そこで藤田教授は次のコンセプトを考えました。もし、「適度な結合と明確な配位方向をもつ金属錯体を用いると分子同士がみずから安定な状態を求め、組み合わさって精密な分子集合体を構築する」だろうと・・・。そして本当に瞬時に組み上がったのがこの正方形分子でした。組み上がるまでには様々な苦労があって、最後は夢の中にもこの結晶構造とほぼ同じ絵が浮かび上がったそうです。
 

自己組織化を駆動力としたナノスケール構造の精密制御

 「適度な結合力」と「明確な配位結合」をもつ金属錯体として私達が選んだのが(en)Pd(NO3)2錯体です。エチレンジアミンによってシス位を保護されたパラジウムの結合サイトは90度に制約されています。またパラジウム(金属)とピリジン窒素(有機配位子)の結合が可逆であるため、両者を混合するとさまざまな形を経由しながら最も分子が安定なところへと形を組みかえることができると考えられます。そのため有限で単一な構造が定量的に組み上がります。同様なコンセプトを用い、有機配位子をうまく設計することでさらに複雑で巨大な分子集合体も組み上がると期待できます。

 

参考論文

  • "Preparation of a Macrocyclic Polynuclear Complex, [(en)Pd(4,4'-bpy)]4(NO3)8, Which Recognizes an Organic Molecule in Aqueous Media"
    M. Fujita, J. Yazaki, and K. Ogura
    J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 5645