ごあいさつ

私たちの研究室は、平成14年に応用化学専攻・物質応用化学講座・機能有機化学分野として誕生しました。応用化学専攻では有機化学の教育研究を受け持っております。
研究では自己組織化や自己集合をキーワードに、生体分子から磁性体まで多岐の分野に渡るさまざまな素材を扱ったテーマを、過去から今日に至るまで縦横無尽に走らせてきました。これらの研究テーマが発散することなく、すべて共通のコンセプトでつながった「共役系」をなしていることが私たちの研究の一番の売りです。1990年に見出した正方形中空金属錯体の自己集合現象を皮切りに、架橋有機分子と金属イオンからさまざまな中空構造体を自発的かつ自在につくってきました。今日では、100を超える成分から10 nm径の三次元巨大中空構造の自己集合も達成しており、さらにはその内部にタンパク分子を包接することにも成功しています。最近では、中空錯体構造を結晶配列させた細孔性錯体を用い、一粒の微小結晶に後から染み込んだ痕跡量化合物を、結晶化の工程を経ずにX線結晶構造解析する「結晶スポンジ法」を開発しました。この手法は、製薬企業における代謝化合物や食品メーカーの食品不純物など、迅速な構造決定を必要とする微量成分構造解析の極めて有効な手法として、分子が関与するさまざまな研究分野から注目を集めています。平成26年にはJST ACCELプロジェクト「自己組織化技術に立脚した革新的分子構造解析」を実施しており、私たちの自己組織化研究は、事業化までを視野にいれた実用化研究にまで発展しました。海外からの博士研究員も多く、いつのまにか総勢40名を超える国際色豊かな研究室となりました。
当研究室からは、これまでに40名以上の博士課程学生が学位を取得して産学に羽ばたきました。また、助教や講師から他大学准教授への転出が5名、准教授から教授での転出が1名と、スタッフの高い流動性も誇っています。学生の学会やシンポジウムへの参加では、毎回のように講演賞やポスター賞などの受賞者が現れ、過去には「連続16回受賞」(誰かが何かしらの賞を受賞する)の記録もつくりました。研究だけでなく、多くの人材が共役系をつくりながら育ってくれたことは、私の大きな喜びでもあります。さらなる高みを目指して、今後もスタッフ、学生、一丸となって頑張る所存です。ご指導とご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
 

研究室を代表して
 
藤田 誠