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研究テーマが生まれるまで

 藤田研の研究テーマは「自己組織化」をキーワードに「オリジナル概念」を発展させることを重視し、「さまざまな領域」に進出する研究をテーマに設定しています。これらのことが満たされているなら、学生は自由に提案し自由に研究を進めることができます。毎年春先に、学生が1年間温めた構想を披露する「研究プロポーザル合宿」を1泊2日で行い、教員と学生で研究テーマを議論します。教員もいろいろテーマのアイデアを出しますが、学生の提案が同レベル(以上)のものであれば、むしろ学生の提案が採用されます。だいたいこの時期にその年のテーマが決まります。

 テーマ設定で私が心がけていることは、だいたい以下のとおりです。


1. イントロがオリジナルか?


 仮にそのテーマがうまくいったとして、学会等で講演するときのことをイメージします。その時のイントロが、良く耳にする受け売りのような話から始まるようであれば、そもそもその研究はオリジナルな研究とは言えません。「イントロがオリジナル」=「誰にもない着眼」ですから、イントロをイメージすることは、自分の発想のオリジナリティーを判別する簡単な手段です。これは研究の途中で方向性を変える時もいっしょです。もっと良いイントロが話せると感じたときに研究テーマを修正することにしています。論文を書くときにイントロに困ったことはありません。はじめから出来上がっているのですから。

2. 各論より総論


 総論は上流にあり各論は下流にあります。周囲を見ずに夢中で研究していると、気がついた時にはずいぶん下流に流されていたということは、上級研究者でもしばしば陥る失敗であります。学位論文の章立てをイメージした時、2章、3章と章が進むにつれ話が各論に入るようであればその研究はしりすぼみです。逆に、「前章の発見をさらに上位概念でとらえるなら…」と上流に向かって話が進むようであれば、研究は広がります。この上流に向かって泳ぐ努力は、回遊魚が一生泳ぎ続けるかのごとく研究者が研究者であるかぎり続けなければいけない努力です。なかなかたいへんですが、油断をせず、たえずこの努力を続けています。

3. 木を見て森を見よ


 「木を見て森を見ず」はこれも上級研究者が(ほど)陥りやすい失敗です。研究ですから細部へのこだわりは重要ですが、そればかりでは森の姿を見失います。テーマ設定の段階で、個々の木の姿だけではなく森の姿形が整うようにバランスをとるようにしています。卒業研究は1年間で起承転結します。3-5年で起承転結する構想を描けるかが大学院生が最も力をつけるべき点だと思います。我々プロの研究者は10-20年で起承転結するような構想を描けるかが勝負です。いろいろおもしろい成果をたくさん出したけれど、振り返ると脈絡のない研究の積み重ねであった、などということのないようにしたいものです。

4. 実験を通しての発見を重視


 我々の頭脳(思考パターン:一種のアルゴリズム)は誰もが似たりよったりで、同じ入力(学術雑誌や講演)から出てくる出力(発想)は結局似通ってしまいます。しかし実験を通しての発見は自分たちだけの入力情報です。この情報をうまくアルゴリズム処理すると、少々平凡な頭脳でもオリジナルな発想が出てきます。大事な点は、大小を問わず、発見があった時はその発見に満足するのではなく、それをさらに上位概念に翻訳できないか?とアルゴリズム処理することです。こうして生まれた概念はオリジナルな財産となります。

5. 人の後追いをするな


 これは当然、真にオリジナルな研究をせよということです。俗な言い方をすれば、たとえ「これがうまくいけば必ずIFの高い○○誌に載る」というアイデアであっても、誰かの研究の流れを汲む(誰かの顔が思い浮かぶ)ような提案はすぐに却下です。このレベルのことは学生のうちに身につけてほしいと思っています。


 いろいろ私見を述べましたが、このあたりを心得てもらえれば、皆さん自由に研究をやってくださいというのが私の研究室の方針です。